「赤いハンカチ」 by Ikuya N. ;夢心塾エッセイ集
― 赤いハンカチ ―
(続)俺の青春時代……
大学二年生春。 友人グループがY女子大と合同ハイキング(合ハイ)をすることになつた。 女性の方が多いとの情報で急遽俺に声がかかつた。
断つた。が、リーダーから
「どうしても……」
と、お願いされ仕方なく参加をOKした。
事前に双方の世話役が集まることになり、それにも同席を依頼された。 真面目な会は好きでなく適当に冗談ばかり言つて立ち回つた。 当日のスケルージュ調整もうまく終了した。 リーダーも上機嫌。 時間がある者で別のコーヒー店へ移動。 夜のデイト迄時間があつたので、参加する。 女子大生の中の一人と話しが弾む。 合ハイ当日の打ち合わせを中心とした話題ではあつたが、初体面なのに、俺のそばから離れようとしない変わつた娘(こ)だつた。 高校時代はスポーツ(バレーボール)をしていたという女の子。 顔色は少し浅黒く髪はショートカツト。 小柄ではあるが、割とキュートな小悪魔的タイプ。 チョツト興味が湧き自然の流れに任すことにした。 彼女の方が積極的。 でも、相手の考え方は読めなかつた。
自分には付き合つている女の子は何人もいたが、お互いにお遊びの仲だつた。 真に「彼女」と言える娘(こ)はいなかつた。
俺自身ではプレイボーイを気取つていた。
彼女はそれを知つてか知らずか、ワザと気を引くようなアクションばかり、、、。 始めは面白かつたが、フェミニストの俺でも少しイラつく。 適当にデイトを繰り返し、わざとプラトニツクラブに終始する。
ある日のこと、彼女から電話があり「ボーイフレンドが出来た」との報告。
「そうか、良かつたネ」
と、素直に返事、、、。
「もう逢うこともないだろう」
と、その時思つた。
それから一カ月後彼女から連絡があり、
「どうしても逢いたい」と…
その日は口紅を塗り、化粧もバツチリしていた彼女だつた。 いつもより胸が大きく見えたのは気の精か、、、。
普通は冗談ばかり言う俺だが彼女の一方的な会話に任せた。 タバコを何本も吸いながらジーツと彼女の顔を見ていた俺。 一時間位経つた後、俺の気持を伝える。
嫌いではなかつたが、好きでもなかつた。
「今日で逢うのは止めよう」
と、別れの宣告。
俺の方から女の子に絶対に言わないと誓つた言葉。 仕方なかつた。 ビツクリした彼女。 また女の子の涙を見ることになつた。
「帰りのバス停まで送つて欲しい」
と、最後の願いを聞き、少し遠回りして歩いた。
今までにない、従順で素直ないい娘(こ)がいた。
その日に限つて俺の腕に手を回して来た。
赤いハンカチを眼にあてながら、、、。
誰にでもある青春の一ページ……
「赤いハンカチ」(石原裕次郎唄)
アカシヤの 花の下で あの娘がそつと
瞼(まぶた)をふいた 赤いハンカチよ
怨みに濡れた 目がしらに
それでも泪(なみだ)は こぼれて落ちた
- written by Ikuya N.
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